ソフトウェア開発におけるGPLの危険性

ソフトウェア

オープンソースソフトウェアとは

通販サイトにTwitterアカウントでログインする機能を実装したいと思ったとき、本来であればTwitter APIの仕様書を読むことから初めなければなりません。しかし、世の中にはそれを代わりに行ってくれて、そのソフトウェアを無償で公開してくれている人々がいます。これを使わせてもらえば、ほんの僅かの時間で実装ができてしまいます。早ければ数分といったところです。

自社製品の宣伝も兼ねてその一部をオープンソースとして公開している企業もあれば、趣味や社会貢献の一環として公開している人々もいます。

もしオープンソースソフトウェアがなければ、OSなどの大規模なソフトウェアは外部から購入するにしても、前述のようなソフトウェアについては費用的な問題から社内で開発することになるでしょう。オープンソースソフトウェアはソフトウェア開発にとってなくてはならない存在です。

GPLとは

オープンソースソフトウェアにはいろいろなライセンス形態があり、どのような使い方をしても何らの制約も受けない(著作権放棄)という太っ腹なものもあれば、作者名を明記しなければならないなどとの一定の条件をつけているものもあります。

その中で商用のソフトウェア開発においてリスクとなり得るのがGPLというライセンス形態です。一言でいえば「このソフトは無償で誰でも使えるが、それを組み込んで作ったあなたのソフトもまた無償で公開しなければならない」という利用条件のことです。

例えば、スマホ用の動画編集アプリを開発する際、Instagramに動画を投稿する機能を実装するためにGPLで提供されているオープンソースソフトウェアを利用した場合、動画編集機能も含めてアプリ全体(正確にはアプリのソースコード全体)を無償公開することが必要になります。

GPLの危険性

ソースコードの公開義務

どこの世界でも他人の著作物を利用するには著作権法を始めとした各種のルールに従う必要があります。GPLであってもその他のライセンス形態であっても同じことです。しかし、GPLには特有の危険性があります。それは問題が起きてしまった際の対応の困難さです。

前述の動画編集アプリの例では、GPLで提供されているオープンソースソフトウェアの利用が意図的でなかった場合、つまり「うっかり混入してしまった」場合でも、権利者からアプリのソースコードの公開を要求される可能性があります。これに従うことは、多くの場合その事業の破綻を意味します。有償アプリの場合はもちろんのこと、広告入りの無償アプリであった場合でも公開したソースコードをもとに広告を取り除いた版が公開されることで同様の事態となることが予想されます。

また、問題となったソフトウェアにいわゆる「企業秘密」が含まれていた場合には影響範囲は大きく広がり、更にその「企業秘密」が他社から提供を受けたものであった場合は更に問題が大きくなります。このような状況になってしまった場合に考えられるのは権利者との交渉によって解決を図ることで、多くの場合は金銭的な補償による解決となるでしょう。

しかし、ここで問題となってくるのはGPLの思想的背景です。GPLというライセンス形態を提唱したのはアメリカのリチャード・ストールマン氏で、同氏は全てのソフトウェアのソースコードは公開されるべきであるとする「フリーソフトウェア運動」を主導し、営利のソフトウェア開発を実質的に否定している人物です。権利者がこのような思想に共感している場合、ソースコードの公開を強く求められるなどして交渉が難航する可能性があります。

第三者による「炎上」

もう一つの危険性は、「GPLで提供されているオープンソースソフトウェアが市販の製品に一行でも含まれていればその製品は自由にコピーして配布してよい」などと考える人々の存在です。

第三者がGPLに基づいて市販の製品のコピーや配布を行うためには、前提として同製品の開発元とオープンソースソフトウェアの権利者との間のGPLの契約が有効である必要があります。意図せず一行混入しただけで契約が成立するとは思えませんし、それについて当事者間で争いになった場合に最終的な判断を行うのは裁判所ですから、第三者が勝手な判断でコピーや配布をしてよい訳がないのですが、問題ないなどとする言説がインターネット上で相当数見受けられます。

また、GPLで提供されているオープンソースソフトウェアを利用する場合であっても、自社内で利用するなどの一定の場合にはソースコードの公開義務が適用されないことがあるのですが、この例外について十分に理解しないままに特定の製品について「ソースコードを公開していないのでGPL違反」などとする言説も見受けられます。

法的に問題がなかったとしても、あるいは当事者同士で問題が解決したとしても、ひとたび「○○社のソフトはGPLだから勝手にコピーしてよい」「○○社はGPL違反をしている」などとの評判が広がれば、最終的にいわゆる「炎上」状態となる可能性があります。

GPLをどう扱うべきか

他人が作ったものを使わせてもらっているわけですから、利用条件を確認してそれを守ることは最低限必要なことです。そのうえで、その他のライセンス形態とは異なるGPL特有のリスクを勘案してそれを避けるという選択も必要になると思われます。

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